遼さんは明日と明後日の結婚式当日二日間、お店を臨時休業することに決めた。
今晩は遼さんの結婚を聞きつけた常連さんたちがお祝いに来てると、さっき雅哉くんから届いたメールで教えてくれた。
仕事を寿退社してからは時々店に顔を出していたから、私が遼さんの彼女だと言うことは知っている人が多いけど、さすがに結婚となると照れくさくて堂々と顔を出すのは気が引ける。
店の前に到着しタクシーを降りると、急いで裏口に周りコッソリと中にはいった。
そのまま黙って三階まで上がろうと階段を一歩登りかけたその時、角に置いてあったお酒の空き瓶に足が引っかかり、派手な音を立ててしまう。
「ヤッバイ……」
顔をしかめ身体を屈めながら辺りを伺っていると、店から戻ってきた悠希くんと目が合ってしまった。
慌てて小さくしゃがみ込んだけれど、ちょっと遅かったみたい。
「あれ? 梓さん、そんなとこでどうしたんですか? 実家に帰ってたはずですよね?」
「う、うん。そうなんだけど、ちょっと早く帰ってきちゃった。遼さんにはまだ内緒で……」
「あっ、遼さん呼んできますね。ちょっと待ってて下さいっ!」
「えっ、えっ……」
今私、内緒でって言ったよね?
溜め息をつき階段に座り込むと、慌てた足音が聞こえてきた。
「梓。あれ? どこにいるんだ?」
階段で座り込んでいる私は、遼さんの方向からは見えない。
しょうがなく左手を高く上げてヒラヒラ振ると、遼さんに自分のいる場所を教えた。



