しばらく話を続けていると少しずつ言葉数も減って、その場に緊張感が漂いはじめた。
とうとうこの時が来たかとふぅ~と息をつくと、姿勢を正す。
「えっと、お父さん、おかあさん。今まで育ててくれ……」
「ちょっと待ったっ!!」
「えぇっ?」
父が私の言葉を、まるで某テレビ番組の告白タイムさながらにバッと手を上げて遮った。
「それは言わなくていいぞ。別に永久の別れじゃないんだからな。父さんの涙は結婚式当日までとっておく」
なんて勝手なことをいいながら、台所を出て行ったしまった。
何なんだこれは? と呆然としている私に、母が新しいお茶を淹れて近寄った。
「梓、お父さん寂しいのよ、可愛い一人娘だから」
「うん、分かってる……」
「あなた、もう遼さんところに帰りなさい。当日はお父さんと二人で式場に行くわ。じゃないとお父さん、『梓を嫁にやらんっ』なんて言って、あなたをどこかに隠しちゃうかもしれないでしょ?」
「そんなこと……」
「いいから、さっさと支度して。遼さん、喜ぶわよ」
実は正直なところ、私も遼さんに会いたくなってきていたところで、母の提案を受け入れるとすぐに帰り支度を始めた。



