ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~


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一月も半ば頃だったか、お詫びと報告をするために、枝里と真規子を店に招待した。
その時にに結婚式は挙げるつもりはないと話をしていると、後ろのテーブルにいた男性が、突然私たちの話の輪に入ってきた。

「遼との結婚話? だったら、絶対に結婚式は挙げないといけないよ。うちの結婚式場、予約入れておくね。あっ、もちろん格安でやっちゃうから安心して」

何だこいつ? とポカンと口を開けている三人に構わず、その男性は椅子を引っ張ってくると席につき、ケラケラと笑い出した。

「俺のこと、『誰だ、こいつ』なんて思ってるんでしょ? 大丈夫、大丈夫。俺、遼の高校っときの親友。んで、親父が結婚式場を経営してて、俺はそこの専務」

「せ、専務っ!?」

「おいっ蒼甫。お前、勝手なこと言ってんじゃないぞ」

カウンターでお客さんの相手をしていた遼さんが、大きな声を聞きつけてテーブルにやってきた。
その顔は、面白くなさそうに歪んでいる。
何故なら……

「その汚らわしい手を、さっさ離せっ!!」

蒼甫と呼ばれた男性が、私の手を握っていたから。
専務と聞いて驚いていた私も慌てて手を振り払い、その人から距離を取った。

「汚らわしいなんて、ヒドい言われようだなぁ。折角、式場を提供してやるって言ってるのに」

「それが勝手だって言ってんだろっ」

普段とちょっと口調が違う遼さんを見て、何だかんだ言っても仲が良いことが窺われた。
でもいつまでも、このまま言い争いをさせたって埒があかない。
どうしたもんかと考えていたら、真規子がパチンッと手を打った。