「お母さんが、白無垢や色打ち掛けもって言うんだけど。教会式で式あげるんだし、和装はいらないような……」
「そうだよな。そこまで盛大にするつもりないし。分かった。俺から母さんに話しておくよ」
その後、スタッフさんも交えて話し合い、ウエディングドレスとカラードレスを決めると店を出た。
お母さんに夕飯を誘われたが、遼さんの店の手伝いがあるからとやんわりお断りして、そこでお母さんたちとは別れた。
結婚式というのは、思っていたより準備が大変だった。
当たり前だが何事も初めてで、ウエディングプランナーさんとの打ち合わせも今日で数回目となった。
今日は当日のMCが決まり、顔合わせとちょっとした打ち合わせで呼ばれた。
「初めまして。今回、披露宴の司会を担当することになりました、里中椛(さとなか もみじ)と申します」
そう言って名刺を出すと、ニッコリと微笑む。
歳は私より、少し上だろうか。
小柄で可愛らしい女性に、心が晴れやかになる。
穏やかに話す彼女を見て、「素敵な人で良かったね」と遼さんに話しかけると、サロンの入り口から入ってきた男性が、こちらに向かってきた。
「おいっ遼。そいつに騙されるなよ。穏やかなのは、客の前だけだ」
「蒼甫……。いえ、専務。勘違いされるようなこと、言わないで下さい」
里中さんが、敵意丸出しの目でその男性を睨みつける。
「里中さん、大丈夫ですよ。こいつの口の悪さは、昔からですから」
遼さんがそう言って男性を見ると、その人はバツが悪そうに頭を掻いた。
そう、この結婚式場は、遼さんの高校時代の友人のお父様が経営していて、この男性はここの専務をしていた。



