ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~


「そんなに驚くことないだろ。心ここにあらずって感じだったから、俺が来たことにも気づかなかったか」

「ごめん。全く気づかなかった……」

ごめんと上目遣いで遼さんの顔を見ると、ポンポンと頭を撫で隣に腰を下ろした。
膝に置かれた手に自分の手を重ねると、身体を寄せる。

「母さんたちの相手で、疲れちゃったとか?」

「全然っ!  と言うか、私はここで座ってるだけで、呼ばれたら試着しに行くって感じで……」

苦笑してお母さんたちの方を見れば、まだ店員さんと真剣に話し合っているところだった。

「自分で選ばなくていいのか?」

「うん……。あんなに一生懸命選んでくれてるんだもん。嬉しいよ」

「でもなぁ、梓が着るわけだし……」

遼さんは不服そうだけど、私は本当に嬉しかった。
だって、私のためにここまでしてくれるってことは、歓迎されてる証拠。
それに自分で選ぶなら、やっぱり私は「あの時のウエディングドレスが着たい」と言ってしまいそうになってしまう。

「大丈夫。もちろん何でもいいってわけじゃないし、選んでくれたのを試着して、気に入ったものに決めるから」

そう言って、遼さんの手をそっと撫でた。