「梓、こっち向いて」
遼さんの身体を見入っていたことが恥ずかしくて顔を向けられないでいると、後ろから両脇に手を差し入れられ、抱き上げられてしまった。
「ちょ、ちょっと遼さん、止めてっ」
「すぐに顔を向けない、梓が悪い」
文句は一切受け入れないと言わんばかりに、バスタブの縁に座らせられる。
露わになってしまった胸を両手で隠し遼さんを伺えば、いきなり顔に大量の泡が乗せられた。
「うぷっ……」
「動かないで。梓、顔洗ってないでしょ? ダメだよ、顔は丁寧に洗わないと」
細かいところまで優しく洗ってくれる。指先が滑るように頬で円を描くと、気持ち良さから抵抗するのを止めた。
目や小鼻、そして唇をそっとなぞられると、身体がゾクッと震える。
顔を洗ってもらってるだけ……。
頭では分かっているのに身体は勘違いをしてしまって、私の一部を熱くした。
「スッピンも可愛い」
そう言えば、遼さんに素顔を見せるのは初めてかも……。
メイクを綺麗に洗い流してもらった顔はさっぱりしたけれど、何だかこっ恥ずかしい。
身を小さくしてゆるゆるとバスタブに身体を沈めていくと、クスクスと笑いながら遼さんもバスタブに入ってきた。
「おいで」
向かい側に腰を下ろした遼さんは、両手を広げて微笑んだ。
浴室で響く甘い声に魅了されてしまい、引き寄せられるようにその腕の中へと入り込んだ。



