ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~


「遼さん、この人おかしいの。遼さんを頂くとか連れて帰るとか言って。早く帰るように言ってくださらない?」

俺を頂く? 連れて帰る?

それってまさか……。
梓はきっと店に行ったんだ。そこで準備中の雅哉に会って、今日俺がここに行ったことを聞いた。
その時にあいつ、あることないこと言って梓を焚きつけたに違いない。
それを鵜呑みにした梓は、ここまで俺を迎えに来たんだろう。

雅哉のヤツ……

今頃店で、一人密かにほくそ笑んでるんじゃないか。
やってくれるな。帰ったら覚えておけよっ!
心の中でニヤリと笑うと、梓を見つめた。

それにしても、梓も素直というか、バカ正直というか……。
俺の自惚れかも知れないが、それほど俺のことが好きっていうことか?
ヤバいな……欲望を抑えることが出来なくなってきた。
腕にギュっと絡まっているあずみの腕を黙って解くと、梓を見つめたまま目の前まで歩いて行き、力強く抱きしめた。

キョトンとした顔をし俺の名前を呼ぶ梓を制すと、兄貴にもう一度自分の気持ちをぶつけた。
もちろん兄貴も黙ってはいない。
俺のことを罵り馬鹿にし、その上「女にいいかげん」だの「何人の女を泣かせてきた」と昔の話しを持ち出してきた。

「兄貴っ!!」

兄貴の話しぶりを聞いていると、梓はもう、俺の昔のことを知っているということだろう。
これには俺も、動揺を隠せなくなってしまった。