と、考え始めてみたものの、今更何を考えたって同じか。
もう少しだけ、この冷たい空気と暖かな日差しに身を任せ気持ちを落ち着かせると、中に戻りトイレに向かう。
用を足し身なりを整えると廊下に出た。
するとリビングから、兄貴と誰かが怒鳴り合う声が聞こえてきた。
兄貴じゃない方の声……聞いたことのあるような気がするが、百合さんか?
でも結局、誰とは思いつかないまリビングのドアの前に立った。
「おい兄貴っ、何怒鳴ってんだよっ!! うるさいだろうが……」
いきなり開けた扉の音と俺の声に驚き、中にいた面々が一斉に振り返る。
その中に意外な人物を見つけ、身体が動かなくなってしまう。
「何で梓がここに……」
俺は、幻でも見ているんだろうか……。
会いたい気持ちのメーターが振り切れて、幻覚を見てしまってるみたいだ。
だって梓がここにいるなんてこと、ありえないだろっ!
すると、いまだ動けないでいる俺に、梓が手を差し伸べてきた。
「遼さん……一緒に帰ろう」
「一緒に帰るって……」
梓は何を言ってるんだろう。
一緒に帰る? どういうことだ?
それに、梓はどうして俺がここにいるって分かったんだ?ここの家の場所だって知らないはず……。
すぐにその答えが分からず頭を悩ましていると、ソファーに座っていたはずのあずみが、甘えるように腕を絡めてきた。



