「おい兄貴っ、何怒鳴ってんだよっ!! うるさいだろうが……」
一週間ぶりに聞く愛しい声に、怒りが一瞬で治まる。熱くなっていた身体を抑えるように胸に手を当てると、ゆっくり振り返った。
「何で梓がここに……」
遼さんの目は驚きで見開き、思考回路がおかしくなってしまったのか、ピクリとも動かなくなってしまった。
「遼さん……一緒に帰ろう」
遼さんに向かって、手を差し出す。
「一緒に帰るって……」
私の言ってることの意味が分からないのか、不思議そうな顔をしたまま立ち尽くしている。
奥さんは私と遼さんを交互に見て、肩を揺らして笑っていた。
一体、どういうこと?
私も今の状況が分からなくなり遼さんを見つめていると、ソファーに座っていた人形……じゃなくて、あずみさんがスっと立ち上がり、遼さんに近づいた。
そして私に見せ付けるように腕を絡めると、遼さんに甘えるような視線を向けた。
「遼さん、この人おかしいの。遼さんを頂くとか連れて帰るとか言って。早く帰るように言ってくださらない?」
「梓……」
「遼さんごめんね。あなたを信じてあげれなくて。もう私のこと、好きじゃなくなっちゃったかなぁ……」
胸が苦しい。「好きじゃない」そう言われてしまったらと思うと、もうこれ以上は言葉が続かなくなってしまった。
堪らず俯きかけた、その時───
遼さんが、腕に絡まっているあずみさんの手を黙って解き私の前まで来ると、強引に抱きしめられた。



