しかし、私のそんな熱い思いも、彼女の言葉で打ち消されてしまう。
「私の遼さんを、どうしてあなたに差し上げないといけないのかしら?」
人形が喋った……。
顔は微笑み言葉も穏やかなのに、目の奥からは冷たいものを感じる。
「あずみ。お前は何も気にすることはない。この女が、おかしなことを言ってるだけだからな」
お兄さんがあずみさんの頭を撫でると安心したのか、頬をほんのり赤く染め目からは冷たさが消えた。
何だ、この二人。パパと愛人みたいに見えるんだけど……。
横を見れば、奥さんが面白くなさそうな顔してるし。
「良かった。遼さんは私と結婚するために戻ってきてくれたのよ。それをあなたが変なことを言い出すから、驚いてしまったわ」
なんかムカつく……。
許嫁だか何だか知らないけど、世間知らずのお嬢様ってところか。
この人には、絶対に遼さんは渡せないっ!!
またも手には握りこぶしが握られ、身体はプルプル震えだす。
「おいっ、いつまでそこにいるつもりだ。さっさと帰れっ! 百合、玄関まで連れて行けっ!!」
お兄さんに強く言われても、奥さんは知らんぷり。
それどころか私に目配せして、何か言えと合図してきた。
「お兄さん、わたしはまだ帰りませんっ。500万返したんだから、遼さんは絶対に連れて帰ります」
「何勝手なこと言ってるんだっ!! お前は騙されていたんだぞ。その証拠に、あいつはここに戻ってきたんだ。それがどういうことか、バカなお前にも分かるだろうっ!!」
「バカバカって……。私はあなたに、バカ呼ばわりされる謂れはありませんっ!!」
私がそう大声を張り上げたと同時に、後ろの扉がバンっと音を立てて開いた。



