いま私は長い廊下を、30代半ばの女性に手を引かれて歩いていた。
と言うのも、意気揚々と呼び鈴を鳴らし誰か出てくるのを待っていたが、一向に反応が無く。どうしようかと思案しているところへ、一台の車が門の前に停まった。
「我が家に御用ですの?」
車から降りたその声の主は、いかにもお嬢様といった出で立ちで私を見据え、にこやかに微笑んだ。
「そっか、あなたもしかして……」
私が答えるよりも早く腕を掴むと、強引に家の中へと連れて行かれた。
そして今に至っている。
彼女の足取りはスキップしそうなほど軽やかで、今にもミュージカルよろしく踊り出しそうだ。私は腕を振られながら、ついて行くのがやっと。
「今日は面白いことになりそうね。私はあなたの応援しちゃう」
「はぁ……」
この人は、何のことを言ってるのだろう。
ちょっと浮世離れした感じの人だし、もしかして天然?
何て考えてるうちに、一番奥の部屋の扉の前に到着した。
「あなたぁ~。お客様をお連れしましたぁ~」
何とも間抜けした甘ったるい呼びかけに、気が抜けてしまう。
「客? 今日はあずみ以外に誰も呼んでないぞっ」
この声って……。
聞き覚えのある、そして二度と聞きたくなかった声に、身体が一瞬にして強張った。



