住所を入力したスマホを左手に持ち教えられるままに歩いていると、閑静な住宅街へと辿り着いた。
あちらこちらに見える建物は、どれもこれも大豪邸ばかり。
自分の実家とのあまりの規模の違いに、溜め息しか出てこない。
一歩ずつ重くなる足を何とか動かし続け、一軒の豪邸の前で足を止めた。
「凄すぎる……」
思わず、心の声が出てしまう。
スマホがココだと表示しているのと同じ場所に建っているのは、重厚な日本家屋。目の前の大きな門には、これまた立派な松の木がそびえ立っていた。
敷地を囲うようにめぐらした塀は、その先が見えない。
「どんだけ大きいのよ」
一歩二歩と、足が門から離れてしまった。
ただただ遼さんに会いたくて、自分の正直な気持ちを伝えたくて、雅哉くんに背中を押されてきてしまったけれど、場違いなことに気づくと弱い自分が出てきてしまう。
どうせ呼び鈴を押したって、お手伝いさんか誰かに門前払いされるだけ。
だったらこのまま帰ってしまった方が……。
ちょっと梓、何考えてるのっ!!
枝里に真規子。誠さんと陽子さん夫妻。そして雅哉くん。
みんなが後押ししてくれて、ここまで辿り着くことが出来たんでしょっ!
それを今更、全部無駄にするつもり?
私の中のもう一人の私が、そう叫んで私を目覚めさせた。
そうだよね。今の私がしなきゃいけないのは、
勇気を出してあの呼び鈴を鳴らし、大切な人を取り戻す───
自信に満ちた足取りで門の前に立つと、力強く呼び鈴を鳴らした。



