ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~


「遼兄も遼兄だけど、梓さんも梓さんだよね。ホントに遼兄のこと好きなの?」

私の心を探るような目に、嘘はつかず素直な気持ちを口に出す。

「好き……だけじゃ終われないくらい、好き」

「そっか。だったら、どうしたらいいか分かってるよね?」

身体を離すとニコッと笑い、「はいっ」とメモ紙を渡された。

「これ……」

「遼兄に実家の住所。今から行けば、夕方には着くと思うよ。本当は送ってあげたいけど、店開けるつもりだからさ」

「なんか、迷惑かけてごめんね」

「そう思ってるんなら、絶対に遼さん連れて帰って来てよ」

そう言ってピシっと親指を立てて見せると、私の背中を押した。
「いってらっしゃーい」と、まるで子供のように手を振る雅哉くんに苦笑しながら駅へと急ぐ。


電車に揺られながら考える。
実家に帰ったということは、お兄さんの話しを受ける……すなわち、許嫁の女性と婚約して、小野瀬に戻るということだろう。
そんなことはあってほしくないと思うのに、良くない状況しか思い浮かんでこない。

いきなり会いに行って、会ってくれるんだろうか……。
もしお兄さんがいたりしたら、またヒドいことを言われるんじゃないか……。

降りる駅が近づくに連れて不安が大きくなり、身体が竦み始めた。