「教えて下さい、遼さんのこと。遼さんのお兄さんのこと。そして小野瀬のことを……」
一言言うたびに、誠さんの顔色が険しくなっていった。そして陽子さんと顔を見合わせるとフーっと大きく息を吐き、私を真っ直ぐ見据えた。
身体中を緊張が包む中、バッグから一枚の紙切れを出した。
「これは?」
「遼さんのお兄さんが私に用意した、遼さんとの手切れ金です」
誠さんは唖然としながらも、その小切手を手にした。
「兄貴、こんなことまで……」
怒ってるのか悲しんでいるのか苦しそうな顔をして、その手は震えていた。
陽子さんが誠さんの肩に、そっと手を置いた。やはりその顔は、悲しみに打ちひしがれていた。
「少しだけ私の話しを聞いていただけますか?」
私も一度深呼吸をすると、遼さんと“おためし”で付き合うことになった経緯やその日からの自分の気持ちの変化。そしてお兄さんと街で偶然会ってしまってからの遼さんの様子や、お兄さんが私に話した遼さんの昔のことなど、全部を話した。
私の取り留めのない話を、真剣に聞いてくれる二人に感謝しながら、最後の言葉を結ぶ。
「これが今、遼さんと私を取り巻く現状です。すみません、長々と……」
「いや、よく話してくれたね。ここ数日、梓さんも苦しかっただろう」
「いえ。きっと遼さんの方が、悩み苦しんでると思います。私がもっと、遼さんを信じていれば……」
また溢れそうな涙を堪え、手を強く握る。



