有無を言わせず連れて行かれると、前に来た時と同じ窓際の席に座らされた。
「誠さ~んっ」
彼の名前を呼びながら、奥の部屋へと消えていった奥様。
自分が考えていた展開と違ってしまい、そわそわと落ち着かな気分でいると、慌ただしい靴の音が響いた。
「梓ちゃん、どうしたっ?」
「誠さん、突然お伺いしてすみません。ちょっとお話がしたくなって……」
「遼と何かあったのか?」
「…………」
どうしてか、誠さんの顔を見た途端、涙が溢れ出てしまった。どうにか止めようと手で押さえても、一向に止まる気配がなかった。
「誠さんっ! 何、女の子を泣かせてるのっ!! 梓ちゃん、ごめんなさいね」
「い、いえ……誠、さん……悪くないので……」
切れ切れに話す私を見て、誠さんが苦笑した。
「陽子、俺が梓ちゃんを泣かすわけないだろっ」
「そうだったわね。あなた、梓ちゃんのことがお気に入りだったものね」
誠さんの奥様、陽子っていうんだ……。
泣きながらも、そういうところはちゃんと聞いている自分に可笑しくなってきてしまった。
それに、目の前で話している二人を見て、気持ちが温かくなってきた。
涙も落ち着き始め、鼻を啜りながらハンカチで涙を拭うと、椅子に座り直して二人に向き直った。



