「梓、よく聞いて。好きだから愛してるからこそ、嫌われたくなくて言えないことだってあるんじゃない? あんたにも心が傷ついた過去があるように、遼さんにだって人には話せない過去が一つや二つあったって不思議じゃないでしょ?」
「…………」
「梓の気持ちも分からなくはないけど、そんなに気になるんだったら前にも言ったように、自分から動いてみなよ。そんなグズグズしてるってことは、梓こそ遼さんのこと信用してないんじゃないの?」
「そんなことっ……」
よく分からない。
でも枝里が言うことは、もっともだ。
誰だって自分の過去、それも汚点になるようなことなら話したくない。それを聞いた後の反応が怖いから……。
それが好きな相手ならなおさらこと。
のそりと身体を起こすと、きちんと座り直す。ボサボサであろう髪を手で整えて、服装を正すと頭を下げた。
「楽しい雰囲気を壊してしまうようなことをして、すみませんでした」
しんと静まり返る室内。
みんな気分を害して、怒ってる?
恐る恐る顔を上げると、何故だかみんなニヤニヤと笑っていた。
「全然気分害してないし。と言うか梓、遼さんに『好きだ、愛してる』なんて言ってもらってるんだ」
真規子が愉快でたまんないと言わんばかりの笑みを浮かべてそう言うと、みんなで顔を見合わせて笑い出した。
「な、なに言ってんのっ! 私そんなこと言ってないっ!!」
「そんな隠さなくってもいいって。もうキスしちゃった?」
ブンブンと首を横に振る。
「いや、もう抱かれてるだろ」
竹中さん、あなたっていう人は……。
「まだそこまでは……」
「ってことは、やっぱチューしたんだぁ」
ボッと顔に火が着いた。



