「さぁ梓っ! 嫌なことは、飲んで歌って忘れちゃいなっ!!」
枝里がマイク越しに、大音量で叫ぶ。
結局一人でいるのが寂しくなって、気づいたらカラオケに来てしまっていた。
でもカラオケルームで待っていたのは枝里と真規子だけではなく、二人の彼氏もいて驚いてしまう。
「恵介くんや竹中さんまでいるって聞いてない。私だけ一人なんて寂しい……」
遼さんのことを考えたくなくて来たのに、彼の顔を思い出してしまって落ち込む。
みんなはワイワイ楽しそうなのに一人暗い顔をしていると、ビール片手に恵介くんが近寄ってきた。
「はい、梓ちゃんビール。そんな暗い顔してたら、可愛い顔が台無しだよ」
「ふんっ、どうせ可愛くないですよーっ!!」
憎まれ口を叩くと、奪い取るようにビールを掴んだ。
ビールは好きじゃないけれど、飲まなきゃやってられない気分だ。
前の失敗も忘れて一気飲みすると、案の定一気に酔いが回ってくる。
ソファーにふんぞり返って座ると、一曲歌って戻ってきた枝里を捕まえた。
「ねぇ枝里。私って、そんなに信用ない人間? 好きだ、愛してるって言ってくれたのに、ここぞっていう時に何で何にも話してくれないのーっ!!」
「それって遼さんの話?」
「それ以外に誰がいるっていうのっ!」
興奮気味に話して、頭が痛い。
その頭を抱えてソファーに倒れこむと、枝里が背中をポンポンとさすってくれた。



