遼さんを待ってる時間が、やけに長く感じる。
たった一晩一緒に過ごしただけで、もうそばに居るのが当たり前になってしまったみたいだ。
こんな気持ち、初めて……
手の甲の痛みも忘れてしまうほど、遼さんへの想いが溢れてしまう。
『好きです、遼さんのことが……』
あの言葉に、嘘偽りはない。心からの本心だ。
おためしなんかじゃない、契約も関係なく好きなんだと、彼に伝えたくなってしまう衝動に駆られる。
でもその反面、それをしてしまうのが怖くてたまらない。
こんなに好きになるんじゃなかった……
今更言ってもしょうがないことを、心の中で呟く。
「待たせて、ごめん。どこにしまったか忘れちゃって……。どうした? 梓?」
肩に手を置かれ、名前を呼ばれて我に返る。
遼さんの心配そうな顔を見て、こんな自分じゃダメだと心に言い聞かせる。
遼さんの前では、笑顔を絶やさないでいたい。それが、遼さんの笑顔を見れる、一番の方法なんだから……。
「何でもない。ちょっと痛さに耐えてた」
嘘も方便。
少し沈んでいた顔を笑顔にすると、遼さんの顔にホッとしたような笑みが広がった。
その笑顔に、胸がキュンと疼く。
「手、出して」
ゆっくり手を上げると、まるで壊れ物を扱うように私の手を包む。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢して」
指先に薬を付けると、赤く腫れたところにそっと塗り込み始めた。



