ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~


変なのは遼さんのせいだよ。なんて、言えるわけもなく……。
そんなの恥ずかしすぎるでしょ?
遼さんの笑顔や言葉ひとつに、、心が動揺しちゃってるなんて。
今だってそう。遼さんは水滴を拭くために私の手を握ってるだけなのに、まるで王子様がお姫様の手をとっている錯覚を思わせ、私を夢の世界に誘ってしまう。

「心ここにあらずって感じだけど?」

「そ、そんなこと……」

無いとは言えないか……。
あははっとごまかし笑いすると、頭をコツンと小突かれる。

「塗り薬、持ってくる。これじゃあ今日のデートは中止だな」

「嫌っ!!」

塗り薬を取りに行くために歩き出した、遼さんの足にしがみつく。
自分の思いがけない行動に驚いて、身体が固まってしまった。それは遼さんも同じだったらしく、止まったまま私を見下ろして唖然としていた。
目が合い数秒経って自分のしていることの重大さに気づくと、慌てて飛び退いた。

「遼さん、ごめんなさいっ。イタっ!」

飛び退いた時に、火傷した手を壁にぶつけてしまった。
その手を押え痛みに耐えうずくまっていると、遼さんに身体を支えられる。

「馬鹿だなぁ。とにかく薬塗らないと。話しはそれからね」

そう言ってニヤリと意味深な笑みを向けると、店へと塗り薬を取りに行った。