君のいる世界





山下さんはミニトマトを口に含み、ヘタをぷちっと取った。


ミニトマト型に膨らんだ頬が、顎の上下の動きに合わせて消えていく。



「ギュッて胸が苦しくなるのも、触れられて嫌じゃないのも、会長を想うだけで意味もわからず泣きそうになるのも、全部会長のこと好きだからよ」



山下さんの言葉が頭を駆け巡る。


この想いが恋愛感情なの…?


好きって、こんな苦しいの?




「髪型を変えてみたり化粧をしようと思ったりしたのは会長を意識したからでしょ?好きな人には可愛く見られたいって女の子なら誰もが思うことだもの」



「…山下さんも?」



山下さんは「私もよ」と柔らかく微笑んだ。




本当は薄々気付いてた。


この気持ちが何なのか…




でも、恋愛初心者の私にははっきりと自分の気持ちが見えなくて彷徨ってしまった。


だけど今、改めて山下さんに言われて心がスッと楽になった。




パズルの最後のピースが嵌ったような、


迷路の先に光が見えたような、


探し続けていた扉の鍵が見つかって、ガチャリと軽快な音を鳴らして開くような…


そんな感じ。