バタバタと車に乗り込み、息を落ち着かせた。
車内には爽やかな気分にさせる洋楽が流れ、窓から入る日差しが暖かかった。
「お嬢様、今日はいつもと雰囲気が違いますね」
「…変、かな?」
「いえ、可愛いと思います」
「え?」
康君はバックミラー越しに真面目な顔で見つめてくる。
可愛いだなんて、康君が言うと思ってもいなくて返事に詰まってしまった。
「ですが、今日は髪を下ろした方がいいかと思います」
「どうして?」
車は学園の前の通りに着き、いつものように端に寄せて停車した。
サイドブレーキを引いてギアをパーキングに入れた康君は、シートベルトを外して振り返った。
「…ここ、キスマーク。付いてます」
そう言って自分の首の裏をトントンと指差した。
私はパッと勢いよくうなじに手を当てる。
一瞬忘れていた昨日の出来事が蘇り、一気に顔が熱くなった。
昨日、チクンッて痛かったのって…
会長にキ、キキ…キスマーク付けられてたって…こと!?

