「…こんなもんかな」
久しぶりに髪をアップしてみたけど、変じゃないよね…?
今までは学園に行くだけで髪を結んだり巻いたり、セットすることが面倒臭かったのに。
今日は何となくセットしてみようかなっていう気分になった。
「…化粧もしようかな」
もちろん化粧をして行ったことなんて一度もない。
ーーーーコンコン。
化粧道具に手を伸ばしたと同時に、誰かがドアをノックした。
「失礼します」
扉を開けたのは康君だった。
康君はすでにきっちりとスーツに着替え髪をセットして仕事モード。
いつも思うけど、プライベートの時間ってちゃんとあるのかな…?
朝は私が起きる前から車を綺麗にして朝食の支度を手伝って、夜は私が寝るまで何かしら仕事しているし。
毎朝早いのにこうやってきっちり身支度もしてる。
寝癖も欠伸も見たことがない。
「ねぇ康君、ちゃんと休めてる?」
「…は?…ええ、休みはしっかりと頂いておりますが…どうかされましたか?」
康君は私の唐突な質問に驚いたような声を出した。

