君のいる世界





私…今、キス…しようと、した…?




カァーッと耳まで熱くなり、心臓は早鐘を打つ。


こんなんじゃ顔、上げられないよ…




「…谷本。あのさ…「「わ、わわ、私!!」」



私は鞄を胸に抱き締め後退りしながら、徐々に会長と距離を取る。



「…先に…帰ります……っさよなら…!」



会長が口を開きかけたけど、私は気付かない振りをして家の方向へ走り出した。





「…ハァハァ」



家の門を締め、それに寄り掛かって息を整える。




嫌じゃなかった…




会長に抱き締められて、


うなじにキスされて…




私はまだジンジンと疼くうなじに手を当てた。


会長のことを思い出すと、胸が苦しくて…


何故だかわからないけど涙が込み上げてくる。




私…どうしちゃったんだろう…


初めて沸き起こる感情で、私の心はパンク寸前だった。