君のいる世界





「谷本」



会長が優しい声で私を呼ぶ。


その声が更に私の涙腺を刺激して、涙がどっと溢れてくる。



「…っごめん。変な話して。気にしないでね」



「谷も…「「会長!」」



私は会長の呼び掛けを遮った。




これ以上、そんな優しい声で呼ばれたら涙が止まらなくなる…


私は涙をぐっと飲み込んで、足を止めた会長の方へ向き直った。




「ここで大丈夫!うち、もうそこだから」



「……」



私を見つめる会長の熱い瞳。


その瞳に胸がギュッと締め付けられて、息をするのも忘れてしまいそうになる。




私は動揺を隠すように視線を逸らした。



「…き、今日はありがとう。おばさんにも宜しく伝えて。…それじゃあ、また明日」



私はその何とも言えない雰囲気に耐えきれなくて、会長の言葉を待たず歩き出した。





「…谷本」


その声と同時に腕を取られ、後ろから会長の優しい温もりに包まれた。


ふわっと爽やかなシャンプーの香りが鼻を擽る。



「…っ!!」



顔に熱が帯びていくのがわかる。


胸が張り裂けそうなぐらい高鳴って苦しい…