親父が死んだ時の母さんや妹二人の顔は今でも鮮明に思い出せる。
母さんは俺らの前では泣かなかった。
泣き崩れる妹を優しく抱きしめながら、冷たくなった親父をずっと見ていた。
小学生だった俺は、母さんは親父が死んでも悲しくなんかないんだなんて思った。
だけど、それは間違いだった。
夜中起きると、母さんは一人で親父の写真を見ながら涙を流していた。
愛する人を亡くした母さんが一番悲しいはずなのに…
母さんは俺達をこれ以上不安にさせない為に…
守る為に強くいてくれたのに。
俺は浅はかな自分を悔いた。
妹達は親父の話をしなくなった。
大和は当時生後数ヶ月だったから親父の記憶なんてない。
運動会で父親と駆けっこしたり、休みの日には公園でキャッチボールしたり。
色んなこと我慢させてるけど一度だって口に出して我が儘を言ったことがない。
小さいながらも親父が死んだこと理解してるんだと思う。

