「それが落し物を拾ってくれた人への態度?お嬢様はお礼すらまともに言えないわけ?」
「…っ!…拾ってくれて…ありがとう御座います…」
谷本麗奈はギュッと唇を噛んで悔しい表情を浮かべる。
気に食わない。
全身から俺を嫌いだと言うこいつが。
「じゃあ、礼でも貰っておくわ」
「…ひゃっ!」
俺は谷本麗奈の腕を思いっきり引っ張った。
最初は触れるだけのキス。
逃げる谷本麗奈の頭を抑え、角度を変えて啄ばむように深くしていく。
「…っん…ちょっ…離して!!」
俺の胸を力一杯押して離れた彼女は、今にも溢れ出てきそうなぐらい涙を溜めて俺を睨んだ。
「ふっ。そんな目で睨まれても怖くも何ともねぇよ」
「どうして…?嫌いなら…関わらなければいいじゃない…!!」
どうして…だと?
俺がお前に関わる理由はただ一つ。
「谷本財閥に恨みがあるから。谷本財閥の大切はもん、壊してやるよ」
あの男に復讐するため。
ただそれだけだ。
その言葉は、谷本麗奈よりも変わりつつある自分の心に言い聞かせた。

