君のいる世界





「お前にするわけねぇだろ」



あの男にどことなく似ている谷本麗奈。


俺は彼女を通してあの男を睨みつけた。




「ーーーーーさ、いてい」




谷本麗奈が低い声でボソッと言った言葉は、最後だけはっきりと聞こえて、



「あんたなんて…大っ嫌い!!」



そのまま勢いよく生徒会室を飛び出して行った。




生徒会室に時計の針の音だけが響く。




“大っ嫌い!!”




目に涙を溜めて俺を睨む谷本麗奈が脳裏に焼き付いて離れない。


胸がズキズキと痛んで苦しい…




「…くそ!」



俺はこの複雑な感情をソファにぶつけた。






「会長。谷本さんが今泣いて出てきたんですけど、何かあったんですか?」



開いた扉から顔を覗かせているのは見覚えのある女。




「誰だ?って顔してますね。私、同じ生徒会委員の山下です」




そう言って口元に笑みを浮かべた女の目は、俺を射るような冷たい。