俺は掴んでいた手首を離し、そっと右頬に触れる。
それは滑らかで、柔らかくて、熱を帯びていて…
それだけで俺の心臓は破裂しそうなぐらい高鳴る。
「まっ…待って…私…」
「黙って」
俺は顔をゆっくりと近付けた。
彼女の誘惑に引き寄せられるように…
その時、ポケットの中の携帯が振動し我に返った。
俺、何やってんだ?
こいつはあの男の娘なのに…
今、俺はこいつに対して復讐の為じゃなく純粋にキスしようとしてた。
「くっ!くくく!」
愚かな自分に笑いが込み上げてくる。
そして陰の醜い俺が姿を現し、再び復讐の火を灯した。
「されると思った?キス」
「…っ、からかったわね!?」
谷本麗奈は怒りで身体中が震えているようだった。

