「私、友達いないの」
「にゃー」
「お前が友達になってくれる?」
寂しそうな声。
今にも泣き出しそうな横顔。
彼女から悲痛の叫びが聞こえてくるようだった。
「にゃあ」
ペロペロと頬を舐める猫。
「だから舐め過ぎだってば!!ふふふ。ありがとね」
一瞬で笑顔に戻った谷本麗奈を見て、胸が高鳴った。
…目が離せられなかった。
何だよ、これ…
こんな感情…知らない。
その後すぐ付き人らしき男が来て、猫を連れて帰って行った。
それからというもの谷本麗奈の色んな姿を見掛けるようになった。
違う…
俺があいつのこと気になってるから、やけに目に付くんだ。
こんな気持ち、認めない。
認めちゃいけない…
あいつは俺の親父を殺した男の娘。
復讐する為の道具。
そう自分に言い聞かせた。

