「くっついとけば少しは暖かいだろ?」
そう言って、ちゅっ、と音を立てながら頬に触れる大輝の薄い唇。
ほんの一瞬だったのに、触れた箇所が燃えるように熱い。
ホントに大輝は私をドキドキさせる天才だ。
「ねえ、蒲公英の花言葉って知ってる?」
「いや」
「【思わせぶり】とか【軽薄】とかあまりよくなさそうな花言葉もあるんだけど、【神のお告げ】とか【ハードルを越える】【真心の愛】っていう素敵な言葉もあるの」
「へぇ」
「中でも私が一番好きな言葉はね、【幸福を知らせる花】。由来は、蒲公英の綿毛を恋占いに使ってたことから【神のお告げ】とか【幸福を知らせる花】って言葉がついたんだって。その一方で、綿毛はふわふわと遠くに飛んでくことから【別離】っていう言葉もあるの」
綿毛がふわっと空を舞い、遥か彼方に飛んで行く姿を頭の中で思い浮かべる。
時間は夕方、空が茜色にほぼ染まる頃。
土手に座ってふぅっと軽く息を吹くと四分の一の綿毛を残し、夕日に向かって緩やかに飛んで行く。

