第三者から見たら、私は大馬鹿者だって言われると思う。
あんな風に脅されて、無理矢理婚約させられそうになって、あのまま人生めちゃくちゃになっていたかもしれないのに。
だけど私は…
「麗奈」
「…お祖母様」
祖母は私の前に腰を下ろし、膝に置いた私の手の上に皺くちゃな小さい手を重ねた。
その途端にふわっと懐かしい温もりと優しさが手の甲から身体中に浸透していくような不思議な感じがした。
「ごめんね…あなたの幸せを祈っていたはずなのに、いつの間にか歪んだ愛になってた」
歪んだ愛。
私が将来苦労しないために、いい相手を見つけること。
それで更に利益が生まれれば、谷本財閥の煩い上層部からも何も言われなくなる。
もし、一人娘の私が会社にとって何の得にもならない相手と結婚したら、何か酷いことを言われるのは目に見えてる。
それを祖母は、伝わりにくい不器用なやり方だけど、私が辛い想いをしないように考えてくれたんだ。

