君のいる世界





昔、この縁側に座って編み物をしてる祖母の背中に抱き着くのが好きだった。


当時は広くてしっかりした背中も、今は私よりも小さい。


私が大きくなったからなのか、それとも祖母が小さくなったからなのか。


どちらにしても随分と時間を無駄にしてしまった。




もう少し早く祖母に自分の気持ちを伝えていたら、あの背中も皺くちゃな手も私が温めてあげられたのに。




祖父が亡くなって、誰も来なくなったこの広い屋敷で、祖母はどれだけ寂しい想いをしてきたんだろう。


仕事でも酷い言葉を浴びせられて、馬鹿にされて…




もし、一緒に暮らしていたら。


もし、私が昔のように毎日でも遊びに来ていたら。


祖母は寂しい想いもせず、家に帰れば暖かい家族がいて、人情を捨てることもなかったかもしれない。




祖父が突然いなくなった現実が、当時の私には受け止められなくて屋敷から足が遠退いた。


あの時、一番辛かったのは祖母。


愛する人を突然失って、屋敷は暗くなって、それでも会社を守らなくちゃいけなくて。