バタバタバターーー…
突然、慌ただしい幾つもの足音が玄関の方から近付いてくるのが聞こえ、私達は顔を上げて見合わせた。
間も無くして襖に三人分の人影が映ると、襖がピシャッと音を立てて開く。
「…お父さん…」
襖を開けたのは顔を顰めた父親、その隣りには心配そうに瞳を揺らすお母さんと康君の姿があった。
「母さん、全部聞きました。どうしてこんなことしたんですか?」
父親のその声は低く、怒りを必死で抑えているかのように微かに震えている。
「…こんなこと?」
「弁当屋で麗奈に脅すようなことを言ったり、勝手に本条グループとの婚約を進めた事です。私は何一つ報告を受けていませんが」
直幸さんが言っていた通りだった。
この人は…父親は今回の事、何も知らなかったんだ…
「どうしてしたか?…全て谷本財閥のためです」
祖母の凛とした声が応接間に響く。

