「うち、ここ」
足を止めた女の子が指を差したのは、赤いトタン屋根の木造の一軒家だった。
「琴音!どこ行ってたの?遅かったじゃない」
玄関から出てきた女性は、私達を見付けると真っ先に駆け寄って来た。
「…ごめんなさい。お母さん」
「こちらは?」
私をちらっと見て眉間に皺を寄せた琴音ちゃん。
その表情から、お母さんにさっきのこと知られたくないんだと悟った。
「こんにちは。私、谷本麗奈と申します。琴音さんが駅前で具合が悪そうにしていたので、少し休んでから送らせていただきました」
「あら、そうだったの。娘がお世話になりまして、本当にありがとうございました。うちに上がってお茶でも如何ですか?」
「いや、でも…」
「ご飯食べてけば…?お礼もまだだし」
琴音ちゃんは恥ずかしそうに目を逸らしながら言った。

