すると大輝は座椅子から降り、直に畳の上に正座をした。
ピシッと背筋を伸ばして、真剣な眼差しで祖母を見据える。
そんな大輝を見た祖母は、眉間に深い皺を寄せた厳しい表情を一切崩さない。
「どうか麗奈を、これ以上苦しめないで下さい。麗奈から笑顔を奪わないで下さい。お願いします!!」
大輝はそう言って、額が畳に着いてしまいそうなぐらい深く頭を下げた。
「大輝!やめてよ!頭上げ……「「お願いします!!」」
私が大輝の肩を揺さぶりながら訴えても、大輝は無視して頭を下げ続ける。
大輝は何も悪いことしてないのに…
私の為にあんな酷いことを言った相手に土下座までしてくれるなんて…
ふと左薬指に光る指輪が目に止まった。
電気も日の光も当たらない部屋の中なのにそれは何よりも光り輝いている。
そういえば、まだ祖父が生きていた頃、祖母に指輪を見せてもらったことがあったっけ…
祖父が節目の結婚記念日の時にサプライズでプレゼントしたダイヤの指輪。

