「谷本さんも苦労しますね」
恵介さんは私を抱き締める大輝を見ながら呆れたようにふっと笑った。
あ…!そうだ…
恵介さんがいるのに…浮かれてる場合じゃなかった…
「大輝!ちょっと離して…」
「あ?何でだよ」
私が腕の中から逃げようともがいていると、大輝は不機嫌そうに眉を寄せる。
「何でって…人様の前だよ?は…恥ずかしいじゃん」
「ぷっ。お前、顔真っ赤」
大輝は笑いながらも「しょうがねぇな」と言って、腕を離してくれた。
「それじゃ、俺はこれで。全て丸く収まることを祈ってます」
恵介さんはそう言って、私に初めて笑顔を向けてくれた。
写真の中の恵介さんもそうだけど、笑った顔はあどけなさが残っていて、いつもの大人っぽい雰囲気はない。
そんな彼に、私も自然と笑みが零れる。
次会う時は、婚約者としてじゃなくお友達として笑い合えたらいいな。
裏門に向かって歩く恵介さんの背中を見つめながら二人の幸せを願った。

