「もう誰も傷付けません。だから、神崎さんの側にずっといてあげて下さい。きっと今、凄く辛いはずですから…」
昨日の彼女の悲しそうな顔が脳裏に浮かぶ。
「勿論。あいつの笑顔は俺が必ず守ります。それから俺からも親には伝えておきます。恐らく、うちの親を納得させるより谷本さんの方が数倍大変だと思いますが……まぁ、谷本さんには強い味方がいるようなんで心配はいりませんね」
恵介さんは私の後ろを見ながらふっと笑って言った。
すると突然、後ろから温かい腕に包まれふわっと懐かしい香りが鼻を掠めた。
振り返らなくてもわかる…
ずっと…ずっと…この腕に抱き締められたかった。
この温もりが恋しかった…
「だ…いき……」
「こいつ、そろそろ返してもらってもいいかな?誰も近寄らないようなとこで男と長い時間二人っきりにさせておけるほど、俺は出来た男じゃないんで」
余裕たっぷりの艶めいた声が耳元で聞こえる。
心臓が破裂しそうなぐらい煩い。

