「素敵な人ね…」
佳菜子は窓越しに直幸さんの姿を見つめながらポツリと呟くように言った。
「うん…ホントに」
「小出さんを振ったこと後悔してる?」
確かに、直幸さんは大人だし優しくて頼りになるし話しやすいし、結婚したらきっと幸せにしてくれる。
だけどそれがわかっていても、私は大輝がいい。
この先、ずっと一緒にいたいと思うのは大輝だけ。
「後悔してない。直幸さんにはもっともっと素敵な女性がきっと現れる」
「中澤さんに話す覚悟は出来た?」
「うん。明日、全部話すよ。もう自分の気持ちに嘘は付かない」
もしかしたら私の我が儘で皆に迷惑を掛けてしまうかもしれない。
だけど私の周りにいる人達は、私が迷惑掛けたくないって言ったら迷惑なんかじゃないって言うし。
これ以上甘えられない、って言ったらもっと甘えろって言う。
自分が大変なことに巻き込まれてしまうかもしれないのに、それでも“頑張れ、一人じゃない”って応援してくれる。
私はそんな大切な人達の想いにちゃんと前向きに応えたい。

