佳菜子は私達のすぐ後ろの席に座り、目に薄っすらと涙を浮かべていた。
「ど、どうして…?」
「昼過ぎにフラフラ歩いてるの見つけて声掛けたんだ。何度か二人が一緒にいるの見たことあったから顔は知っていたし」
直幸さんはそう言いながら佳菜子を私の前の席に座らせた。
今目の前で鼻を啜る佳菜子は弱々しくて、私の知ってるしっかりした彼女とは違う。
そんな佳菜子の姿に、私は動揺を隠せない。
「山下さんは悔しいって泣いてた。麗奈ちゃんに何かあったのは気付いてたのに力になれなかったって…辛い嘘を付かせてしまったって」
佳菜子は唇をギュッと噛み締めながら小刻みに震えている。
そして大粒の涙が机に落ちた。
佳菜子は気付いてたんだ…
屋上で言った事は全て嘘だってこと。
私が本当の事を話さないで逃げたから、もっと悲しませることになってしまった。
佳菜子が人の気持ちを考えられる優しい女性だって知っていたのに…

