車に乗り込もうと腰を屈めた時、誰かに名前を呼ばれて辺りを見回した。
「…あ、直幸さん」
少し離れた場所に停まっていた車から降りて来た直幸さんが爽やかな笑顔で歩み寄ってくる。
「どうしたんですか?」
「麗奈ちゃんを待ってたんだ。これから時間あるかな?美味しいスイーツでもご馳走するよ」
「はい…大丈夫ですけど…」
「じゃあ俺の車で行こう。柳田さん、いいかな?」
康君は「遅くならないようにお願いします」と頭を下げた。
「どう?ここのパンケーキ。美味しいだろ?」
康君と別れた後、私達は今世間で話題のパンケーキ屋に来ていた。
私の前にはお店一番人気の大きな苺が乗ったパンケーキとホットココア。
「はい。美味しいです。とっても」
苺の甘さと酸味が口に広がり、自然と笑みが零れる。

