パチーン!!!
「……っ!!」
一瞬何が起きたのか理解出来なかった。
わかることは左頬がヒリヒリと痛み、徐々に熱を帯びてきているということだけ。
左頬に手を当てて佳菜子に目をやると、震える右の掌をジッと見つめ唇を噛み締めている。
そして、佳菜子は私を見ることなく走って屋上を後にした。
屋上の重い扉がゆっくりと閉まっていく…
私と佳菜子の関係に終わりを告げるように。
今追い掛けて“全部嘘だよ”って言ったら、佳菜子は許してくれる?
いつもみたいに優しい声と安心するような温かい笑顔で私の名前を呼んでくれる?
「佳菜…子……っ、佳菜子ぉっ!!」
私はあと数センチで閉まる扉に向かって走り出した。
自分の足も閉まっていく扉も、吹き抜ける風も、全てがスローモーションのように感じる。
佳菜子…
佳菜子…
ーーーーーーガチャン!
無情にも私の目の前で、扉は音を立てて完全に閉まった。

