俺は遠い昔、親父に肩車をしてもらったことを思い出した。
あれは家族でキャンプに行った時だったか、俺の手が届かない所に虫がとまってて、その時初めて親父が肩車してくれたんだよな。
虫が取れたことよりも親父が肩車してくれたことの方が楽しくて、嬉しくて。
俺はなかなか降りようとしなかったんだっけ…
…そういえば、あの時他に同い年ぐらいの女の子がいたような…
でも誰だっけ?
「大輝!」
俺は突然至近距離に現れた麗奈の姿と声で我に返った。
「ぼーっとして、どうしたの?」
「あ…いや、俺も親父に肩車してもらったことあったなって」
俺がさっきの親子が肩車してる姿を見ながら言うと、麗奈も納得したように表情を緩ませた。
「そうなんだ」
「その時身長がまだ低くてさ、虫に手が届かなかったからしてくれたんだけど、俺虫が取れたことよりも肩車の方が楽しくて……って麗奈!あそこから動くなって言ったろ?」
ったく、行き違いになってはぐれたりしたらどうすんだよ。
それに一人で歩いてたら変な男の絡まれるっつーの。

