君のいる世界





ちゅ。



「…っ…!!なっ…ななな…」



俺はキスしたい衝動を抑えきれなくて、俺より背が低い麗奈の唇に、腰を屈めてわざとリップ音を出すように触れるだけのキスをした。


案の定、麗奈は一気に顔を真っ赤にして俺から数歩後ずさる。




「ご馳走様」



「ちょ、ちょっと!こんな所でそんな…っ」



「じゃあこんな所じゃなかったらもっと凄いのしていいの?」



「っ!!ば、馬鹿!変態!!」



馬鹿で変態で結構。


寧ろ、あの程度のキスで我慢したことを褒めてほしいぐらいだ。




今もまだ真っ赤な顔で、辺りをキョロキョロ見ている麗奈の姿に、ニヤけが止まらない。


とりあえず今は、このぐらいで勘弁してやるか。





「ほら、行くぞ」



俺は麗奈の手を取って歩き出そうとすると、ぐいっと後ろに身体が引っ張られた。


振り返ると、麗奈は俯いたままその場から動こうとしない。




「麗奈…?」



前髪が垂れ下がって麗奈の表情がよく見えない。