君のいる世界





「…別に…何もない…」



「はぁ…そんな顔して何もないわけねぇだろ?話してみろよ」



「……」



琴音は頭の中でどうしようか考えているのか、眉を寄せ暫く黙り込む。


やがて薄く口を開くものの、「れ……やっぱいい」とすぐに口を閉ざして俺から視線を逸らした。




「…バイトで何かあったのか?麗奈や朱美さんに聞けばすぐわかることだぞ?」



「お、お兄ちゃんには関係ないでしょ!?もう放っといてよ!!出てって…出てって!!」



そう言うと、琴音は俺が剥がした掛け布団を再び頭まで被った。




「はぁ…あんま、母さんを心配させるなよ」



これ以上はどんなに優しく話掛けても無駄。


俺はため息を残し、部屋を後にした。





自室に戻り、ポケットから携帯を取り出す。


麗奈の番号を表示すると発信ボタンを押した。




『お掛けになった番号は、電波の届かない所にいるかーーーーー……』