四畳半の部屋に所狭しと置かれた二段ベッド。
その上段に、琴音は掛け布団を頭まで被って横たわっていた。
掛け布団が小刻みに震え、微かにひっくと嗚咽が聞こえる。
「…琴音」
「…っ!!」
声を掛けると、琴音は一瞬ビクッと反応し嗚咽は止まった。
「何かあったのか?母さん、心配してるぞ?」
「な、何にもないよ!ただ、バイトで疲れたから…すぐ休みたかっただけ!!」
琴音は動揺を隠すように無理に明るい声で言った。
だけど、俺だって馬鹿じゃない。
ずっと親父の代わりに兄弟を近くで見て来たんだ。
琴音が無理してるのなんて一目瞭然。
「ったく、お前が俺に隠し事なんて百年早いっつーの」
俺はそう言いながら思いっきり掛け布団を剥いだ。
俺の目に飛び込んできた涙でぐちゃぐちゃの琴音の顔に、俺は目を見開いた。
「お前…何があったんだよ…」

