時刻は20時。
夕方から忙しくなる弁当屋の仕事は、この数時間があっという間に過ぎて行く。
やっと客足が収まってほっと息をついたのも束の間、22時過ぎにくるピークに備え、厨房はこの時間は休む事なく仕込みに追われていた。
私は一人レジに残り、他の人は厨房に篭っている。
「ん?何か外が騒がしいな…」
急に商店街が騒がしくなり、硝子越しに外の様子を窺うと、外にいる殆どの人が好奇な目をある一点に寄せていた。
そこに何があるのか、店の中からじゃ全くわからない。
「…なんだろう?芸能人でもいたのかな?」
私が独り言を呟いていると、常連客のおじさんが慌てた様子で店の中に入って来た。
そして乱れた息を整えると、興奮気味に外を指差して言った。
「麗奈ちゃん!凄いよ…あれはヤクザだね」
「ヤクザ…ですか?」

