君のいる世界





その日、大輝に家まで送ってもらうと玄関先で父親と鉢合わせた。


父親とはこの前のお墓参りの時以来少し会話が増えて、トミさんは薄っすら涙を浮かべるぐらい喜んでいた。




「今帰りか?」



「うん…」



「そうか。大輝君の様子はどうだ?」



「普通だよ」




父親は私の答えにほっとした様子だった。




あの日、海を後にすると父親が駅前に車を停めて待っていた。


車に乗っていけ、と言われたけど私達は断って二人で電車で帰った。


その別れ際、大輝は父親に深々と頭を下げて今までの態度を謝罪していた。


父親はそんな大輝の肩に手を乗せて、「今度家に遊びに来なさい」と笑顔を見せていたっけ。




電車に乗ると、私は大輝のお母さんから預かった紫のハンカチを取り出した。


大輝はそれを受け取ると、悲しげな表情で暫く見つめていた。


その時の大輝の顔が頭から離れなくて、今でも思い出しては胸が締め付けられる。