君のいる世界





ややあって、父親はゆっくりと口を緩ませる。



「早くしないと大輝君を見失うぞ」



少しだけ頬を赤らめた父親もまた、お母さんがいた幸せだったあの頃と同じ。


私の胸にジワリと温かいものが染みた。






その後、霊園の門を潜り止まる事なく丘を下る。


大輝はきっとあそこにいる。




お父さんとの思い出が詰まった、あの海に……






丘の麓にある駅に着くと、踏切で足止めされた。


カンカンカンと踏切の警報器が甲高い音を鳴らし、二つある赤色の灯火が交互に点滅している。


この数分さえももどかしい。




早く大輝の隣りに行って抱き締めてあげたかった…


きっと、大輝は自分を責めてる。


私が出来る事は側にいることだけだから。




電車が目の前を通り過ぎると、追うように吹く突風が私の髪と首に巻いていたマフラーを靡かせる。


やがてゆっくりと遮断機が上がり始めると、私は上がり切るのが待ち切れず腰を屈めて通り抜けた。