「俺は…俺は……っ…」
大輝は肩を震わせながら言うと、突然走り出した。
大輝の目から流れた涙が横に流れ、私の手の甲に落ちる。
「大輝!!」
私の声は届かず、その背中はどんどんと小さくなっていく。
「私、追い掛けます!!」
「麗奈ちゃん。これ…」
お母さんは私にチケットを包んだ紫のハンカチを差し出した。
「大輝を宜しくね」とにっこり笑った顔が、私のお母さんにそっくりで改めて母親の愛情の偉大さを感じる。
私はそれを受け取り、石畳に置いていた自分の鞄を持って走り出した。
父親の横を通り過ぎ、数段降りたところでピタッと足を止め振り返ると、父親は私に優しい目を向けていた。
それは、まだ離婚する前の父親の目と同じで…
「…お父さん。この前は何も知らないで酷い事を言ってごめんなさい」
自然と私の口から飛び出した言葉。
父親は目を大きく見開き、驚きを隠せないようだった。

