君のいる世界





そしてお母さんは大輝の方に身体を向け、何かを決意したかのような強い眼差しで大輝を見つめる。


大輝もそんなお母さんから一ミリたりとも目を逸らさない。




「大輝…谷本さんはね、二人が傷付かないように、自分から悪役を名乗り出てくれたの」



「悪役を…?」



「さっき麗奈ちゃんが言ってた事の殆どが嘘なの。本当はスケジュールに無理なんてなかった。人件費だって十分過ぎるぐらいで…経営が危なかったのはお父さんの会社の方よ。もう破産しか後がないっていう時に、谷本さんが手を差し伸べてくれた。だからお父さんは助けてくれた谷本さんの為にも、自分に着いてきてくれる社員の為にも必死だったの。休みを作業員に譲っていたのは本当だけど体調は壊していなかった」



私も大輝も、何も言葉が出てこなかった。


話の展開に頭が付いていかない。




「全ては二人との約束を守るために起きた不運な事故。お父さんは多分、一人で残って作業している時に二人の喜ぶ幸せそうな顔を思い浮かべていたのね…それで集中が切れて、雨で足を滑らせて…」



「そんな…」



「お父さんの手には皺くちゃになって雨に濡れたテーマパークのチケットが握られていたわ」



お母さんはそう言うと、鞄から畳まれた紫のハンカチのような物を取り出した。